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税務・経営講座

これから起業・創業しようとしている方、起業したてで、税務・会計・経営のことをよく勉強したことがない、これから勉強しようという方に、なるべく専門用語を使わず、わかりやすく解説したものをUPしていきます。
こんな内容がわからないので、わかりやすく解説してほしいといった要望もお待ちしています。
事業をやっていて、これを知らないと損するといった内容も書いていく予定ですので、もう何年も経営している方でもぜひ一読してみてください。

2017年5月2日「所得が多くなったら、法人成りをした方がいい」というのは間違い!?

3月後半から、個人事業者の方からの「所得が増えてきたので法人成りを検討したい」という相談が増えてきました。その相談を受けているなかで、具体的な数値を使ってシミュレーションを繰り返していた結果、「所得が増えれば増えるほど、法人成りをした方がいい」とは言い切れないということが判明しました。法人成りした後にきちんとした節税対策を施せば、やはり法人成りした方が負担は減ります。

 

ここでお伝えしたいのは、ただ単に法人成りするのではなく、「個人事業者ではできないが法人成りした後にできる節税対策」をしないと、社会保険の負担を加味した負担は軽減できないということです。

 


 

ポイント1:法人成りしただけでは社会保険を加味した負担は逆に増える場合がある

ポイント2:法人での節税対策をすれば、法人成りして負担を軽減できる

ポイント3:個人事業者ではできないが法人ではできる節税対策で、社会保険料の負担増加を回避する

 

〘 注 意 事 項 〙

今回は単純化したケースで検討しているので、家族構成・節税スキームの条件によっては試算結果がかわるので、法人成りする際は、具体的なケースでシミュレーションを実施して判断してください

 

 


 

文中での負担は、支払額の増減を意味しています。特に税金の支払額+社会保険の支払い額の増減を中心に解説していきます。

 


 

節税対策をしないで、法人成りをした場合の税金と社会保険の支払い額を比較したシミュレーションの結果を、下記の表1にまとめてみました。

ここでは「節税対策なしの法人成り」と呼ぶことにします。

 

【シミュレーションの前提】

・長野市在住の40歳未満の独身の個人事業者。従業員はいない前提

・事業所得:青色申告控除前の事業所得額

・法人成りした場合、事業所得額と同額(社会保険料会社負担分を控除後)を役員報酬として支給。

・個人事業者のときは国民年金・国民健康保険加入。法人成り後は社会保険に加入。

・社会保険の負担額は、会社負担分+個人負担分の合計で試算

 

表1:「節税対策なしの法人成り」

(単位:万円)
事業所得 税金 社会保険 合計
600万円 △ 59 +74 +15
800万円 △ 90 +113 +23
1200万円 △ 162 +158 △ 4
△は支払減少、+は支払増加

具体的なシミュレーション内容は添付ファイル参照してください。冗長になるため、ここでの細かい説明は割愛します。

〈節税なしのシミュレーションシート〉

<節税なし 所得600万円> <節税なし 所得800万円> <節税なし 所得1200万円>

 

 

【税金の減少要因】

・給与支給にすると、給与所得控除により課税所得が減少するため、所得税・住民税が減少となる。

・事業所得が290万円を超えると個人事業税の負担がかかるが、給与支払いになるとこの負担がなくなる。

 

※給与所得控除とは、給与収入から一定割合分を経費として差し引けるような制度のことで、給与収入-給与所得控除=給与所得金額となります。

詳しくはこちらのリンクをご参照ください

https://keiei.freee.co.jp/2015/08/25/kyuuyo-kouzyo/

 

 

【社会保険の増加要因】

・個人事業者の加入する国民年金は定額、一方、会社員が加入する厚生年金は給与支払額の18%が保険料となるため給料支払が増えると負担が増えていく。

・個人事業者の加入する国民健康保険は長野市の場合63万円が上限、一方、健康保険は給与支払額の10%が保険料となるため給料支払が増えると負担が増えていく。

 

【総合的な増減要因】

・給料支払いになることで税金が減る割合よりも、社会保険の負担が増えていく割合の方が高いため、事業所得が600万円→ 800万円と増えても、逆に負担が増えてしまうという結果になります。

・事業所得が1200万円のケースで負担が減るのは、月額給料が64万円(年額768万円)で厚生年金の負担が上限となるので社会保険の負担の増加割合が小さくなったためです。

 

【補足事項】

・給与所得控除は給与収入が1200万円を超えると一定額の230万円となるので、給与所得控除による税金減少効果はなくなってしまいます。

・今回のシミュレーションでは支払額の増減の比較をしています。厚生年金の負担が増えた分は将来受け取る年金が増えるといった便益は考慮していません。

 

 


 

次に、法人成りをした際に、150万円の節税対策をした場合で負担がどの変化するのかシミュレーションしてみました。具体的な節税対策について後述します。

ここでは「節税対策ありの法人成り」と呼ぶことにします。

 

 

【シミュレーションの前提】

・「節税対策なしの法人なり」の前提に加えて、150万円の節税対策をしてその分給料支払い額を減らすこととします。事業所得600万円のケースだと、600万円-150万円=450万円を給料の支払原資として計算します。

 

表1:「節税対策ありの法人成り」

(単位:万円)
事業所得 税金 社会保険 合計
600万円 △ 67 +37 △ 30
800万円 △ 113 +77 △ 36
1200万円 △ 196 +144 △ 52
△は支払減少、+は支払増加

〈節税ありのシミュレーションシート〉

<節税あり 所得600万円> <節税あり 所得800万円> <節税あり 所得1200万円>

 

 

【負担の減少要因】

・給料支払額が減少したことで、税金・社会保険の負担が減少

・特に社会保険の減少割合が大きい

 

 

 


 

次に節税対策についてですが、考え方と併せて簡単に説明していきます。

詳しい解説はまた後日したいと思います。ここでは簡単な説明にとどめます。

 

【退職金の活用・退職金のための積立の活用】

項  目 概   要
退職金

・給与所得より税金が安い

⇒ 給料を減らして、退職金の積み立てをする。

経営セーフティー共済 ・掛け金の全額損金(経費)OK・解約時は基本的に満額返金

⇒ 退職金の積み立てとして活用する。

⇒ 解約の収入は利益となるが、同額の退職金の支払いをすればこの部分の課税は実質ない

生命保険

・積立型の生命保険の場合、掛け金の1/2は損金(経費)にできるものが多い。解約時には掛け金の90%以上の解約返戻金が戻ってくる。

⇒ 退職金の積み立てとして活用する。

⇒ 掛け金の1/2は経費にならないので、資金的な効率は経営セーフティー共済よりも悪い

⇒ 生命保険としての保障もあるので、保障・積立・節税の3つの機能をもっている。

 

【個人契約から会社契約へ変更して会社の経費とする】

項  目 概   要
役員社宅 ・会社の借上社宅とすることで、自己負担を差し引いた金額を経費にできる。

・個人事業者は使用割合分しか経費にできないので、役員社宅の方が一般的に経費にできる割合が大きくなる。

生命保険 ・生命保険の受取人を会社とすることで、掛捨型の生命保険を全額損金(経費)にできる。

・個人契約での生命保険では、生命保険料控除の上限が保険の種類ごとに4万円(又は5万円)であるのに対して、節税効果は高い。

・会社が受け取った生命保険を個人に支給すると、所得税が発生する。

 

以上、法人成りによる収支の改善という観点からの考察を説明いたしました。個人事業から法人になることで、信用力が増したり、相続税対策として活用できるなど収支だけでは判定できないメリットもあるので、一概に「節税対策なしの法人成り」を否定するわけではありません。収支が大幅に改善しないケースもあるということを理解し、法人成りの前には収支のシミュレーションを検討してから実行に移すことをお勧めしたくこの記事を書かせていただきました。

 

法人成りを検討されてて、シミュレーションを実施してほしいという方は、当事務所では初回無料にて相談対応いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

 

最後に、上記文中で記載されている項目はわかりやすさを重視して適用のための細かい注意点の記載は割愛しています。実行前には各専門家にご相談のうえ実施のほどお願いいたします。